肥溜めストロベリーミックス

twitterで書ききれない思いを家の微弱なWi-Fiに乗せて届けます

気体のような期待

すべては「今日どうだ?」の一言から始まった。


話は遡ること5月2日の朝9時 突然 直属の上司からご飯のお誘いを受けた。

実は前々から「行く行く」など言っていたが 風邪や用事などでことごとく予定が合わなくなり 春の風と共に記憶から流されていたものだと思っていた。


 しかし、その日 そいつは某ベッキーの不倫騒動より唐突にやってきた  








「今日どうだ?」











完全に虚をつかれた 上司ながらあっぱれの一言


喉にコンニャクが詰まったかと思うぐらい、声が出ない 「厳しいです」と一言言うだけでいい、だが声がでない。

体調はバッチリ、しかも昼までの仕事だったので帰って小学生の頃 買い漁った”こち亀”でも読み返すだけの予定だったので、咄嗟に嘘もつけない、隣に座っていた友人Yも思わず 「はい、大丈夫です…」














まさかの 契約成立




上司は仕事を早めに切り上げ 私達 新入社員2人と共にご飯を食べに行くというものだ。

ここで負けている私達ではない 以前よりトラップを仕掛けておいた。 



こちらも遡ること3週間前 「何が食べたい?」と上司に聞かれた。



この答えを間違えると"美味しくない・楽しくない・長い"地球で最も苦痛な三重奏を奏でてしまうからだ。

しかし、その時 今までの奢られ経験をフルに活用し 最適の答えを瞬時に導き出したのだ


そうそれは………













「焼肉」



老若男女 どの世代にも愛され、けなされず、求められる、奢られ界では"寿司"に次ぐ伝家の宝刀の一本である。

なにより、今回の上司は会社でだいぶの古株 
メンツ・プライド・意地を全て兼ね備え 会社内では誰にも敬語を使わない 最強の上司なのである。 


さあ、どうでる  

我々の「焼肉」と言う最大の答えには……















「黒毛和牛食ったことあるか?食わしたる」





かかった!!!!!!!!!!!!!!

圧倒的勝利
オセロで言うところの"全角取り" 手も足も出ない。

そして迎えた 5月2日

 
突然の誘いに内心 動揺を隠せなかったが、さきほどのトラップがいま そう"今" 発動するのだ!

「焼肉」ならどこに行っても失敗はしない
あんぱい of the あんぱい なのである。


心の中でガッツポーズをし、右手にブランデーを持ち海辺の夕陽を見据えながら自分に酔う 




上司「3人で予約するぞー!」




その後 仕事が終わり 上司と自分・友人Yで梅田で向かった

いつもより 上司の背中が大きく見える、GW 人で溢れかえった道の流れに中指を立てるように歩いていく 虎の威を借る狐のように我々もヒョコヒョコと付いていく


東梅田を通り抜けお初天神へと到着 





そして店に着き看板を目にし我々は目を疑った


















栄 華 亭












Why Japanese people?!!!!!!!!



上司が満を持して連れて行った場所に、厳然として眼前に厳然たる 栄華亭が燦然に参上している







「ここ知ってるか?美味いぞ〜」




目の次に耳を疑った。自分の体に信じれる物がなくなる瞬間 疑心暗鬼の塊として完全体を迎える





満心創痍のまま席に着き 悪い夢を拭うようにおしぼりで顔を拭いた。





最初の盛り付けと生ビールが到着し、すかさずビールを手に取り 悪い夢から覚めるため口をつけた。

届いた盛り付けに上司が何かをしている、飲みながら目をそちらに向けた。





ドバドバドバドバドバドバドバドバ





あろうことか上司が盛り付けにタレをぶっかけている、それも垂直落下式パイルドライバーのように…

まだここはナイトメアの途中なのであった…。







だが しかし 肉は肉 美味いもんは美味い

上司が淡々と焼いてくれる肉を口いっぱいに頬張り 、咀嚼、咀嚼、咀嚼、咀嚼ゥゥゥーーーッ!!







う、うまい……朝3時半に起き 7時に仕事場に着き そこからの仕事 シチュエーションは完璧 不味いはずがない




ある程度 お腹を満たせば 上司とのお話タイムだ

如何に上司を上機嫌することで、次の食事に繋げる
ひとつなぎの大秘宝 ワンピースなのである


ここで 大業物21工のひとつ  

「まじっすか!?」

 が大活躍

   
上司「◯◯に〜があってな」  

自分「まじっすか!????」

上司「ほんまに、でなそれでな〜が◯◯で」

自分「ま、ま、マジっすか!????????!」

上司「そう、それで ◯◯が…」

自分「マジっすかぁぃえぁぁうぃぁええねおぬちゆるむまるゆむゆなちふつゆむ!?!?!?!?」

上司「」




肉も少々キツくなってきたところで上司が「しんどなってきたら 違うタレかけて味変えや」


腹は八分目でだいぶ胃にはきてたがまだ食える

上司の言うとおり 味を変えたらもつと食べれる

しかし 初めから小皿に入っていたタレが気に入っていたので、それを探していた


だが、ない。ない。、ない、ないないないない


例のタレがどこにもない、そんな筈は………………………………………







ん?









ある音が思い出となって脳内を駆け巡る











ドバドバドバドバドバドバ









完全にやられた。




いまこの1秒前までトラップに掛かったのは上司の方だと思っていた、しかしそれこそがトラップ 圧倒的戦力差を見せつけられた。







その後 タレで味を変えつつ、十分目というところまできた。もうなにもいらない。はぁ 食って幸せだ そんなひと時を過ごそうとしたが 上司の一言で状況が一変





「おい、もっと食え」








パ、パワハラだと…?!   
お前には権威どころが、この店に連れてきた時点で尊敬と羨望のパラメーターはゼロ


なぜ そこまで平然とイキれているんだ?!!!

 そもそも そのエリンギチーズはお前がわざわざ 急いでいる店員さんを呼び止め 頼んだものだろう!!!!! なぜ腹が十分目、尊敬と羨望を失い、怒りの居場所を見失った1人の新入社員に全てを任せる。。。。。。。。。。


そこからは作業へと移る

箸で取る
口に入れる


記憶がない。当たり前だ ひとつの咀嚼マシーンとしてこの世に降り立ったのである。


すべてを食べきり あと一歩 昇天手前で店をでる





このまま一緒に帰るのは嫌だったので

「あっ、グランフロントで友達と待ち合わしているのでお先失礼します!!!」


咄嗟にイマジナリーフレンドを作り 梅田と言うコンクリートジャングルに清水は逃げるように消えていった。   




終わり